「家で勉強します」ではなく、朝9時に塾へ来てください

前回の記事では、現在、九州大学の夏休みで帰省している卒業生が、約1か月間、諫早駅前校で働いてくれているという話をしました。
https://toshin-isahaya.com/3032/

昨年まで実際にこの校舎で受験勉強をしていた卒業生です。

その卒業生に、

「自分たちが受験生だった頃と比べて、今の校舎をどう思う?」

と聞きました。

返ってきた答えは、かなり厳しいものでした。

「全然勉強していないと思います。」

前回の記事では、その話を紹介しました。

今回は、その続きです。


一番気になるのは、土日の朝です

卒業生が他にも気になっていたことがあります。

それは、

「土日なのに、朝9時から来ている人が少なすぎる」

ということです。

卒業生はこう話していました。

「自分は休みの日は、朝9時から夜10時まで絶対にいました。」

これは決して、

「昔の先輩は偉かった」

という話をしたいわけではありません。

考えてほしいのは、

学校がない日だからこそ、一番長く勉強できるはずではないか

ということです。

平日は学校があります。

部活がある人もいます。

学校行事もあります。

だから、自分で自由に使える時間には限界があります。

ところが土日や祝日は違います。

朝から時間があります。

にもかかわらず、

11時に来る。

13時に来る。

15時に来る。

あるいは、

「今日は家で勉強します。」

本当にそれでいいのでしょうか。


「家でも集中できます」は、感覚の話です

もちろん、家で集中して勉強できる人はいます。

ですから、

「家では絶対に勉強できない」

と言うつもりはありません。

しかし、受験勉強で考えるべきなのは、

「家でも勉強できるか」ではありません。

「どの環境に自分を置いたとき、一番安定して勉強できるのか」

です。

ここは感覚ではなく、研究も見てみましょう。


研究①「勉強する場所」が用意されている生徒ほど成績が高い

OECDが世界各国の15歳を対象に実施しているPISAでは、学校が放課後などに宿題や自習をするための場所を提供しているかについても調査しています。

PISA 2018では、学校に宿題をする場所がある生徒は、そうでない生徒より、OECD平均で読解得点が高いという結果が出ています。

家庭の社会経済的背景などを考慮した後でも、正の関連が残りました。[1]

さらに、近年のPISAでも、

学校が宿題をするための場所を提供していることと、学力には正の関連がある

ことが報告されています。[2]

もちろん、

「自習室に行けば、それだけで頭が良くなる」

という意味ではありません。

成績が高い生徒だから積極的に学校の自習場所を使っている可能性もあります。

つまり、これらは「因果関係」まで証明したデータではありません。

それでも、世界規模のデータで、

「学習するために用意された場所を持っていること」と「学力」には関連がある

ことは重要だと思います。


研究② 大学生でも「図書館を使う学生」の方が成績が良かった

大学生を対象に、大学図書館の利用と学生の成績との関係を調べた研究もあります。

その研究では、

図書館の学習室を利用した学生の方が、GPAが高く、進級率や卒業率も高かった

ことが報告されています。[3]

これも、

「図書館に行ったからGPAが上がった」

とまで断定することはできません。

しかし、

勉強する人ほど、勉強するための場所に行っている。

これは非常に重要なことだと思います。

家にいるのではなく、

学校へ行く。

図書館へ行く。

塾へ行く。

そして、

「ここでは勉強する」

という場所に自分を移動させる。

成績の良い人たちは、そういう環境の使い方をしています。


研究③ 人間は「意志」より「環境」に負ける

「自分は家でも集中できます。」

そう思っている人に、もう一つ知っておいてほしい研究があります。

学習環境と「先延ばし」の研究をまとめたレビューでは、

誘惑が多いこと
気が散るものがあること
自由度が高すぎること
行動開始のきっかけが弱いこと

などが、勉強の先延ばしを起こしやすくする要因として指摘されています。[4]

考えてみてください。

家には何がありますか。

ベッド。

スマートフォン。

YouTube。

ゲーム。

漫画。

テレビ。

冷蔵庫。

そして、

「ちょっと休もう」

がいつでもできます。

家という場所が悪いのではありません。

むしろ家は、

休むためには最高の環境です。

だからこそ、受験勉強には不利になることがあります。

意志の強さだけで毎日それらと戦う必要はありません。

誘惑の少ない環境に自分を移動させればいい。

それが一番簡単です。


「土日は勉強する」では弱い

もう一つ、行動科学で非常に面白い研究があります。

「Implementation Intentions(実行意図)」と呼ばれる考え方です。

簡単に言えば、

「頑張ろう」と決めるだけではなく、「いつ・どこで・何をするか」まで先に決める

というものです。

多数の研究を統合したメタ分析でも、このような具体的な行動計画は、実際の行動を促す効果を持つことが確認されています。[5]

つまり、

「土日は勉強します」

では弱い。

「何時からやる?」

「どこでやる?」

という判断を、当日の自分に残しているからです。

朝起きて、

「もう少し寝ようかな」

「10時からやろう」

「ご飯食べてからにしよう」

「ちょっとYouTube見てから……」

こうやって、勉強開始時刻は簡単に後ろへずれていきます。

だから、もっと具体的にする。

「土日は9時に塾へ行く。」

ここまで決めてください。


朝9時に来れば、その日の勝負はかなり決まる

9時に塾へ来れば、

9時から勉強できます。

当たり前です。

でも、この「当たり前」が大きい。

仮に13時に来る人との差は、

4時間です。

土曜日で4時間。

日曜日で4時間。

毎週8時間。

1か月なら約32時間。

半年続けば約190時間です。

これはもう、

「少し勉強時間が違う」

というレベルではありません。

丸々何十日分もの勉強量の差になります。

受験生にとって土日の午前中は、余った時間ではありません。

最も価値の高い時間の一つです。


「夜10時までいろ」と言いたいのではありません

卒業生は、

「自分は朝9時から夜10時まで絶対にいた」

と言っていました。

もちろん、全員に毎回13時間塾にいなさいと言いたいわけではありません。

部活がある人もいます。

体調管理も必要です。

十分な睡眠も必要です。

しかし、

少なくとも、何も予定がない休日の朝を家でなんとなく過ごすのはやめてほしい。

これは強く思います。

受験までに残されている土日は有限です。

「もっと早くやっておけばよかった」

と言っても、その土日は戻ってきません。


家で集中できるかどうかを証明する必要はない

私は、

「家では絶対に集中できない」

と言いたいわけではありません。

家でも長時間集中できる人はいるでしょう。

ただ、わざわざ受験という大事な時期に、

「自分は誘惑に勝てる人間なのか」

という実験を毎週する必要がありますか。

塾に来ればいいんです。

周りには勉強している人がいる。

机がある。

教材がある。

質問できる先生がいる。

そして何より、

塾に来た時点で、「勉強を始める」という最大のハードルを越えています。

だから私は、受験生には、

家で頑張れる人になることより、頑張らざるを得ない環境を使える人になってほしい。

と思っています。


シルバーウィーク、期待しています

これからシルバーウィークに入ります。

学校が休みになる日も増えます。

つまり、

普段より勉強できる時間が増えるということです。

ここで、

「せっかくの休みだから」

と家でゆっくりするのか。

それとも、

「せっかく学校が休みだから、朝から勉強できる」

と考えるのか。

ここで差がつきます。

九州大学に進学した卒業生が、昨年まで実際にこの校舎で受験勉強をしていました。

その卒業生が今の校舎を見て、

「土日の朝9時から来ている人が少なすぎる」

と感じています。

ぜひ、その言葉を重く受け止めてください。

「今日は家でやります。」

ではなく、

「朝9時に塾へ行きます。」

やる気がある日に来るのではありません。

来るから、勉強が始まるのです。

今回のシルバーウィーク。

朝9時に校舎へ来たとき、

「今日は多いな」

と思わせてください。

皆さんが朝から校舎に集まって、本気で勉強するシルバーウィークになることを期待しています。

朝9時、待っています。


参考文献

[1] OECD, PISA 2018 Results (Volume V): Effective Policies, Successful Schools.

[2] OECD, PISA関連調査報告.

[3] Fitzgerald, S. R. et al. (2025), “Library Use and Student Success: Focus on First Generation Students,” New Review of Academic Librarianship.

[4] Svartdal, F., Dahl, T. I., Gamst-Klaussen, T., Koppenborg, M., & Klingsieck, K. B. (2020), “How Study Environments Foster Academic Procrastination: Overview and Recommendations,” Frontiers in Psychology, 11, 540910.

[5] Keller, L. et al. (2024), “The when and how of planning: Meta-analysis of the scope and components of implementation intentions in 642 tests,” European Review of Social Psychology.