三人の荷物持ち

こんにちは。東進諫早駅前校の山﨑です。

小学二年生の長男が学校の宿題として、

「こころの手をつなごう」の音読をしていました。

音読を聞きながら「三人の荷物持ち」という小話を思い出したので、少し話をしたいと思います。


旅のはじまり――重たすぎるリュック

まだ朝の涼しさが残る山道を、一人の青年タクヤが歩いていた。

背中のリュックはパンパンで、寝袋に水、食料、そして「何かあったときのため」の道具がぎっしり。

こういうタイプ、いるよね? 

「備えは万全に」と言いながら、つい全部抱え込んでしまう人。

歩き始めは平気でも、坂が急になるにつれ肩紐が食い込み、

「もう少しだから」と自分に言い聞かせても脚は重くなる。


二人目――「少し持とうか?」のひと言

そこで出会ったのがミサキ。

同じルートを辿る彼女は小ぶりなザックひとつで、足取りも軽やか。

タクヤの汗だくの姿を見るや、こう言った。

「ねぇ、大丈夫? もし良かったら水とか少し持とうか?」

タクヤは最初、首を振ったんだ。

――「せっかく自分で用意した荷物を他人に持たせるなんて悪い」――

そんなプライドと遠慮が頭をよぎったわけ。

でも肩は悲鳴を上げてる。

思い切って水筒を一本ミサキに託すと、身体がふっと軽くなるのがわかった。

「ありがとう」と口にした瞬間、なぜか足取りまで軽くなる。

荷物だけじゃなく、気持ちまで分け合った――そんな感覚だ。


三人目――「分け方」を考える達人

二人になってしばらく進むと、今度は大きな十字路でソウタという青年に会う。

彼はキャンプ用のワゴンを引きながら地図を広げていた。

見るからに力持ちで、しかも道具の整理が上手そう。

ソウタはタクヤのリュックをひと目見るなり、ニヤリ。

「君、そのロープとスコップ、今日中に使う予定ある?

もし急がないなら、ぼくのワゴンに載せちゃわない?」

ただ“手伝う”だけじゃなく、積み方・持ち方を工夫する提案までしてくれたわけさ。

三人で荷物を並べ替えてみると――

  • 水などすぐに使う物はミサキの小ザックへ
  • 重いけれど今は不要な道具はソウタのワゴンへ
  • タクヤのリュックには行動食と防寒具だけ

結果、タクヤのザックは半分の重さになり、

ミサキもソウタも「これなら全然平気」とニコニコ。


道中――肩よりも心が軽くなる瞬間

荷物を分け合ったあとは、ただの登山道がおしゃべりの道に変わる。

ミサキは旅先で出会った絶景の話をしてくれるし、

ソウタはワゴンに積んだコーヒーセットで即席カフェを開く。

タクヤはと言えば、最初こそ気後れしていたものの、

「さっきまで黙々と坂を登っていた自分」に比べたら、

ずいぶん表情豊かに笑っている。

途中の見晴らし台で休憩したとき、タクヤがふとつぶやいた。

「一人で来たら、たぶんここで引き返してたかも」

荷物が軽くなっただけじゃなく、

“話せる相手”と“頼れる相手”がいるおかげで、

心のスタミナが切れなくなったんだね。


ゴール――たどり着いたのは「山頂」ともう一つ

夕方前、三人は目的地の山小屋に無事到着。

ウッドデッキに腰を下ろして、星が滲み始める空を見上げながらこんな会話を交わす。

ミサキ:

「重さを半分こにしたら、距離は倍歩ける。やっぱり分け合うって大事だよね。」

ソウタ:

「いやー、三人で持ったら1/3ずつで済んだから、

もしかしたら距離は三倍になったかも?」

タクヤ:

「うん……何でも一人で背負わなきゃって思ってたけど、

助けてもらうって、気持ちいいんだな。ありがとう。」

その瞬間タクヤは、ただ“山頂”に着いたのではなく、

**「人に頼る力」**というもう一つの高みに立ったのかもしれない。


おわりに――この話が教えてくれること

  1. 頼る勇気は、弱さじゃなく前進のスイッチ
  2. 分け合えば、重さは物理的にも心理的にも減る
  3. 「持ち方」や「分け方」を一緒に考えてくれる人がいる

もし今、抱えている悩みが肩に食い込んでいるなら、

――「水筒一本だけでも」――試しに誰かに預けてみない?

案外その瞬間から、道は明るく、足取りは軽くなるかもしれないよ。

受験勉強をする中でも、実は同じようなことで悩むことがあります。

自分だけで考えて何とかしようと思う人、学校の先生には嫌われているかもしれないからと質問に行けない人、親に遠慮して自分のやりたいことを口に出せないでいる人、いろんなことを遠慮してしまい、一人で抱え込んでしまう。

受験という山を登る上で、大切なことはしっかりと考えていること、悩んでいることを伝えること。

嫌われるかもしれない、心配されるかもしれないと思っても、勇気を出して伝えること。

荷物があると点数が伸びにくくなったりするものです。

悩みという荷物をみんなで分け合いましょう。

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