【授業の「ゴチャゴチャ」に学ぶ】林修先生の話から考える、数学ができるようになる本質


Xの投稿に以下のようなものがありましたので、紹介します。
東進ハイスクールの林修先生が、あるインタビューでこんな話をしていました。
◆ 授業の準備を忘れた「東大数学の回」
林先生がまだ数学の講師だった頃、ある日、授業の直前になって予習をしていないことに気づいたそうです。
その日は「東大の過去問を解説する回」。
いつもは綿密な準備をされる先生ですが、もう時間的に間に合わない。
「今日は休みにしよう」と思い、塾に電話をかけようとした瞬間、
「今一番すべきことは授業に穴をあけないことだ」と思い直し、
ほぼ初見のまま授業に臨んだそうです。
◆ その日の授業の反応
当然ながら、授業中は試行錯誤の連続。
「あーでもない、こーでもない」と考えながら何とか解ききり、授業を終えました。
しかし驚いたことに、生徒たちの反応は意外なものでした。
「ああいう授業が分かりやすかった」
「またやってください!」
林先生は“反省”をしたつもりが、生徒にとっては“神回”になっていたのです。
◆ なぜその授業が刺さったのか
私(山﨑)もこの話を読んで、非常に共感しました。
授業というのは本来、先生がしっかり予習して準備をするのが大前提です。
ただ、この話の本質は「先生や数学ができる人の頭の中の動きが見えた」ことにあります。
数学が苦手な生徒ほど、模範解答のような“完成された式”が
いきなり頭に浮かぶものだと思いがちです。
しかし実際には、そこに至るまでにたくさんの「ゴチャゴチャした試行錯誤」があります。
- 図を描く
- 仮定を立ててみる
- 別の式を立ててみる
- 遠回りをして失敗する
こうした“答案に書かれない部分”こそが、数学の思考のリアルな部分です。
◆ 授業では省かれがちな「過程」
授業では、時間の制約もあり、どうしても綺麗な解答を見せることが中心になります。
でも実際に「考える」とは、遠回りや失敗を含んだプロセスを経験することです。
林先生のその授業は、
「数学ができる人が、実際にどう考えているか」をリアルに見せた授業でした。
生徒が「分かりやすい」と感じたのは、
自分にもできそうだという“現実的な思考の流れ”を感じ取ったからだと思います。
◆ why型思考を持つことの大切さ
私がよく言っている「質問をすることが大事」という話も、
実はこれと同じです。
ただ「この問題の解き方を教えてください(how)」ではなく、
「なぜその考え方になるのか(why)」を質問してみてください。
- なぜこの図を書いたのか
- なぜこの文字を置いたのか
- なぜこの条件を使ったのか
こうした「理由を問う質問」を重ねることで、
思考のプロセスが自分の中に積み重なり、
次に似た問題に出会ったとき、自分で考える力が身につきます。
◆ まとめ
林修先生の“偶然の授業”は、
「模範解答の外側にある思考こそが数学の本質」ということを示してくれました。
授業を受けるとき、
解き方だけでなく「どう考えているのか」に注目してみてください。
質問を通じて“why型思考”を磨くことが、
本当の意味で数学ができるようになる第一歩です。