― 山﨑先生が読んだ『壁打ちは最強の思考術である』より ―

最近読んだ本に、伊藤羊一さんの『壁打ちは最強の思考術である』があります。

「壁打ち」というと、テニスや卓球の練習を思い浮かべる人も多いかもしれません。

でもこの本で語られている「壁打ち」は、**“自分の頭の中を整理するための対話”**のことです。


◆ 「壁打ち」とは、頭の中のモヤモヤを言葉にすること

著者の伊藤さんはこう述べています。

「壁打ちとは、頭の中にある構造化されていない情報(=モヤモヤ)を、口に出して言語化する思考法である」

私も読んでいて、「これはまさに東進の面談だ」と感じました。

模試の結果や授業内容を話してもらうとき、ただ報告をしてもらうのではなく、**“自分の頭で整理してもらう”**ことを目的にしています。

たとえば、

「物理のこの単元があやふやなんです」

というとき。

担任助手の先生に、「じゃあ一度、授業内容を説明してみようか」と言われた経験はありませんか?

それこそが「壁打ち」です。

説明しようとすることで、自分の中の理解がどこで止まっているのかが見えてくるのです。


◆ 壁打ちは「思考を深める」練習

本書では、壁打ちの本質をこう表現しています。

「壁打ちは、思考を広げ、固めることができる。問いかけの基本は『SO WHAT?(それで?)』『WHY?(なぜ?)』『TRUE?(本当に?)』の3つだ」

これを勉強に当てはめると、こうなります。

  • 「SO WHAT?」=この公式を使うと何がわかる?
  • 「WHY?」=なぜこの式になるの?
  • 「TRUE?」=本当にその考え方で合ってる?

つまり、壁打ちは「自分の考えを人に話すことで、より正確に、より深く考える訓練」なのです。

テキストチェックで「なぜそう考えたの?」と聞かれるのは、まさにこのためです。


◆ 担任・担任助手との壁打ちは“思考トレーニング”

東進の面談は、単に勉強計画を立てる場ではありません。

「最近の授業、どこが一番難しかった?」「何ができるようになった?」という質問を通して、自分の考えを整理する時間でもあります。

面談中の会話は、言い換えれば「頭の中の整理ノート」。

考えを言葉にすることで、自分がどこで迷っているかが見えてきます。

壁打ちは一方的に教えてもらう時間ではなく、**自分の頭で考えたことを“音に出す時間”**なんです。


◆ 社会に出ても“壁打ち”は武器になる

本書では、壁打ちは社会人にとっても最強のスキルだと書かれています。

「決められた型通りの仕事ではなく、自分の頭で考えて動く力が求められる。壁打ちは、思考を形にする技術である」

社会に出ると、答えのない課題が多くなります。

そんなとき、上司や同僚と“壁打ち”をして自分の考えを整理できる人が、問題解決のスピードも早い。

高校生の今から、「考えを言葉にする練習」をしておくことは、将来の成長にもつながります。


◆ 「話すこと」で成長する

本書には、こんな印象的な一節があります。

「話すことで自分を知り、動き出し、仲間をつくることができる」

勉強でも部活でも、人に話すことで初めて“自分の課題”に気づけます。

だからこそ、担任助手や担任との会話を“ただの確認”で終わらせないでください。

その時間を、「自分の考えを磨く時間」にしてほしいのです。


◆ 山﨑先生からのメッセージ

この本を読んで改めて感じたのは、**「考える力は、話すことで鍛えられる」**ということです。

授業でわからなかった部分を自分の言葉で説明してみる。

模試の反省を先生に話してみる。

そのすべてが「壁打ち」であり、「思考力のトレーニング」です。

そして、社会に出たあともこの姿勢は変わりません。

どんな職場でも、壁打ちできる相手――つまり、「本音で話せる人」を持っている人は強い。

だからこそ、今のうちから“壁打ち力”を磨いていきましょう。


📘 参考文献

伊藤羊一『壁打ちは最強の思考術である』(flier要約版)

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